先輩に聞く


私の保育の原動力。
新潟県の豪雪地帯で生まれ育つ。
都内の区立幼稚園で、二人の子育てをしながら、24年間勤務。義父の介護のため、退職。
グローバルキッズ常盤園の施設長を経て、現在、グローバルキッズコトニア吉祥寺園で施設長を務める。日本語教師やアロマインストラクターの資格も持つ。数年前の社内忘年会では、腕相撲大会で頑張りすぎて、腕を骨折…!さまざまな“伝説”には事欠かない。
原点は、遊びの中で生まれた小さな「私設幼稚園」。

高校卒業後、幼稚園の先生になるために上京、体育系の短大の、幼児教育科へ進みました。 このころの私にはまだ「保育園」という選択肢はなく、小さい子どもと関わる=幼稚園というイメージがありましたので、必然的に卒業後は都内の区立幼稚園に就職しました。
その期間に私は、とっても貴重な経験をすることになりました。勤務先の幼稚園で、文部省(現在の文部科学省)から委託研究を受け、3年間携わりました。「幼児の言葉の獲得とコミュニケーション能力の発達」という研究テーマでした。この研究が、コミュニケーションのあり様の学びのきっかけとなり、保育者としてだけでなく、外国の方々に日本語や日本文化を教えたり、アロマセラピーで、ストレスを抱えている方々を癒したりする道にも、つながったのだと今、改めて思います。
大切なことは、子どもたちが教えてくれた。

40名の子どもたちの前でうたうB君は、照れ屋のB君とは思えないほど、堂々とした伸びやかな歌声でした。真剣な表情で聴いている子ども達を見回すと、大粒の涙をこぼしているA君の姿がありました。「A君どうしたの?」と声をかけるとA君は「あのね…B君…歌じょうず…」と途切れ途切れに言い、3番まで歌いきったB君に盛んに拍手を送っていました。
5歳児が友達の歌う姿に感動して流す涙を見たのは初めてで、私の方が胸が熱くなったことを今でも覚えています。
またあるとき担任をしていたクラスでこんなことがありました。園庭にあった小山で、男の子たちが裸足で登っては滑るを繰り返して、楽しそうに遊んでいました。
4歳クラスで一番幼さが残るC君は、いつも小山の近くの鉄棒で、友達がそこで遊ぶ様子を見ていました。「C君、一緒にやってみたら?」と声をかけましたが、C君は鉄棒に目をおしあてて、「僕寝てるの」と言いました。
何日も何日もC君の様子を観察していましたが、ある日、C君の靴下がちょこん、と鉄棒にひっかけてあったのを見て思わず微笑んでしまいました。彼は相変わらず鉄棒に目を押し当ててじっとしていました。
ときどき、目を離してみているのですが、ぱっとまた目を伏せてしまいます。数日後には、今度は靴を片一方脱いでいました。でも相変わらず鉄棒につかまっています。そしてある時、一人の子が「C君、一緒にやろう!」と声をかけました。すると今まで、山のように動かなかったC君が、友達といっしょに小山に駆け出していったのです。それからというもの、みんなと遊べるようになりました。C君は自分のペースで、コミュニケーションの方法を獲得したんです。誰に押し付けられることもなく、自然にその時が訪れたのですね。
子ども一人ひとりの思いと、その思いをため込んでいる時、そしてそれを表すタイミングが大切です。保育者が一人歩きして、自己満足で終わってしまうことのないようにしたいですね。本来子どもは、自分から伸びようとしているのですから。
ほかにもたくさんのエピソードがあって、話しきれないほど!なのですが、これまで出会った子どもたち一人ひとりが、私に、たくさんのことを教えてくれました。
心のアルバムから、ときどき引き出してきては、思い出の中の子どもたちの姿に、微笑んだり、目頭が熱くなったり…。時間がたっても、色あせないものなのですね。
子育て、介護…人生は学びの連続。

でも、介護を通してまた、学びがありました。身の回りのことができなかった義父が、励ましたり、気持ちを受け止めたりする、言葉がけひとつで少しずつ、自分のことをしようとして張り切って、日々生き生きと過ごすようになりました。肌もつややかになっていきました。
その様子を見て、人間て人との関わりで、こんなにも元気になれるんだ、いくつになっても心の持ちようで、より良く変わっていくことができるんだということに、気付かされました。また、嫁である私にはもちろん、息子である夫にも、毎日の入浴後や就寝前に「ありがとうございました」とおじぎをしてくれました。どんな時にも、誰に対しても、感謝の気持ちを持ち続けた義父の姿は、今でも心に焼き付いています。
8年間の介護は私にとって大変ながらも、人と心を通わせ、いのちの大切さを知った大切な時間でしたね。そして、この期間に、日本語教師やアロマインストラクターの資格をとり、自分自身の充実した時間も持つようにしていきました。義父は90歳で、穏やかな表情で大往生しました。
ひとことプラスの言葉がけ、を大切にしたい。

保育者である前に、人として、心の通ったコミュニケーションを大切にしていきたい。そしてそれを若い保育者たちにも実践してもらいたいですね。毎週、各職員が提出する週報にはできるだけ丁寧に、コメントを書きいれるようにしています。「あなたのこういうところが素晴らしい。もっとこうしたら、もっと良くなるんじゃないかしら?」といったように“ひとことプラスの言葉がけ”が大切。「ありがとう、本当に助かりました!」…言葉の持つ力を、しみじみ感じる日々です。
私はとにかく好奇心が強くて、「どうしてこうなるのかしら?これはどうやってできるのかしら?面白い!」と、身の回りのことにいつも目を見開いて観察しています。人間や物事への好奇心が高じて、ドジをしてしまうことも(笑)そんな一面も個性と思って受け止めていただいて、これからも自分もキラキラ輝いていけたらいいな、そう願っています。(2011.8.現在)